臨床神経学

短報

葛根湯加川きゅう辛夷が誘因と考えられたReversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)の1例

市來 征仁, 渡邊 修, 岡本 裕嗣, 池田 賢一, 高嶋 博, 有村 公良

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科〔〒890-8520 鹿児島市桜ヶ丘8丁目35-1〕

症例は51歳女性である.排便中に1回,入浴中に2回,のたうち回る激しい頭痛が突然に出現した.2回目の頭痛消退後,痙攣発作を呈した.頭部CT,くりかえし施行した髄液検査でくも膜下出血は否定された.頭部MRIで両側後頭葉・両側頭頂葉に拡散強調画像およびFLAIR画像で高信号域をみとめた.脳血管造影でびまん性分節状攣縮をみとめた.三回目の頭痛以降,無症状で,また4カ月後の脳血管造影では,異常は消失しており,Reversible cerebral vasoconstriction syndromeと診断した.発症誘因として,強力な鼻腔鬱血除去作用のある葛根湯加川きゅう辛夷の関与が考えられた.本例は,漢方薬が誘因と考えられた最初の報告である.
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(臨床神経, 48:267−270, 2008)
key words:可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome:RCVS), Call-Fleming症候群, 雷鳴様頭痛, 葛根湯加川きゅう辛夷, 鼻腔鬱血除去剤

(受付日:2007年8月7日)