臨床神経学

短報

インダパミド投与による低ナトリウム血症が原因と考えられた意識障害患者の1例

濱野 忠則1), 山本 智子1), 宮森 勇2), 栗山 勝1)

1)福井大学医学部第二内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
2)同 第三内科

サイアザイド系類似利尿薬であるインダパミド投与による低Na,低K血症が原因と考えられた意識障害の1例を報告する.症例は83歳の女性である.高血圧治療のため,インダパミドの投薬を開始し約2カ月後より悪心,嘔吐,食欲低下が出現し,頻回の転倒,意識障害もみとめられたため入院した.意識混濁(JCS 20)以外に明らかな巣症状はみとめなかった.いちじるしい低Na(115 mEq/l),および低K(2.8 mEq/l)血症を呈していたが,インダパミド中止により意識レベル,ならびに電解質はすみやかに正常化した.低Na,低K血症の機序として,利尿作用によるNa,Kの尿中への排泄増加,ならびにADH分泌促進,および嘔気,嘔吐による摂取量低下が考えられた.インダパミドはサイアザイド系利尿薬同様の電解質異常が出現しうる.近年脳梗塞二次予防効果が報告されて以来,神経内科領域での本剤の使用量が増加してきており,注意を喚起する意味で報告した.
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(臨床神経, 48:52−55, 2008)
key words:インダパミド, 低Na血症, 低K血症, 意識障害

(受付日:2007年3月14日)