臨床神経学

症例報告

Ivermectinの皮下投与が奏効した重症播種性糞線虫症の1剖検例

高嶋 伸幹1)4)*, 矢澤 省吾1), 石原 明2), 杉本 精一郎3), 塩見 一剛4), 廣松 賢治5), 中里 雅光4)

1)宮崎県立延岡病院神経内科〔〒882-0835 宮崎県延岡市新小路2-1-10〕
2)同 臨床検査科病理
3)独立行政法人国立病院機構宮崎東病院神経内科
4)宮崎大学医学部 第三内科学講座
5)福岡大学医学部微生物・免疫学講座
現 飯塚病院神経内科

症例は抗HTLV-1抗体陽性の49歳男性である.入院の約8週間前より発熱,頭痛,排尿困難があり,髄液および胸腰髄MRI所見より脊髄炎をうたがわれステロイド治療を受けた.症状は改善したがイレウスを生じ,十二指腸壁生検より糞線虫症と診断した.Ivermectinの経口と注腸投与は無効であり皮下注射をおこなった.イレウスは改善し糞便からの虫体排出も消失した.しかし細菌性髄膜炎による閉塞性水頭症を合併し,入院153日目に肺炎のため死亡した.剖検をおこない糞線虫の完全駆虫を確認した.Ivermectin皮下注射の治療報告はまれである.また沖縄県出身者で抗HTLV-1抗体陽性者がステロイド療法後に原因不明のイレウスを生じたばあいは,本症を鑑別に挙げるべきである.
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(臨床神経, 48:30−35, 2008)
key words:糞線虫症, HTLV-1感染, Ivermectin皮下注射, 水頭症

(受付日:2007年3月26日)