臨床神経学

日本神経学会賞受賞

脊髄小脳失調症10型の分子遺伝学的解析

松浦 徹

名古屋大学大学院医学系研究科神経遺伝情報学〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞65〕

脊髄小脳失調症10型(spinocerebellar ataxia type 10:SCA10)は小脳失調とてんかんを主徴とする優性遺伝性神経変性疾患であり,家系によりその臨床症状は多様性に富む.その遺伝子変異は,ATXN10のイントロン9にあるATTCT5塩基リピートの不安定異常伸長である.5塩基病としてヒト唯一のものであり,リピート病として最大の変異を示すものの一つである.SCA10 ATTCTリピートは,他のリピートとことなる高次構造をとり,特有のinstability patternを示す.ATXN10の機能は十分判明していないが,神経発現の強い細胞質内局在タンパクであり,ニューロン生存に重要な役割を果たしていると考えられている,SCA10の病態メカニズムは,単純なloss-of-functionやgain-of-functionでは説明がつかない.SCA10研究が,病態が依然として明らかでない非翻訳領域リピート病解明の一助になることを期待している.
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(臨床神経, 48:1−10, 2008)
key words:SCA10, ATTCTリピート, instability, 非翻訳領域リピート病

(受付日:2007年1月26日)